学園デイサービス(R6/4/1)
- 2024年4月1日(月)
- 学園デイサービス
- 活塾亭ぐる女、活塾亭八三つ、活塾亭あーと
- 演目 ぐる女「おばけのパーティー」、八三つ「お祭りのカメ」「ケチな親子」「まわりねこ」、仲入り(あーと歌「きいている」「ピアノだいすき」)、あーと「雷の子」「侍の奥さん」「てれすこ」
開口一番は、この日が初舞台の活塾亭ぐる女さんです。ほんの6日前に初稽古をしたばかり。その半月前に体験教室で泥棒の小咄を教室生5人で演じてみたのですが、ぐる女さんはこそ泥を宝石泥棒に仕立てて噺を作っていて、その大胆なアレンジに驚きました。創作することが大好きなのでしょう。稽古、そして高座で演じたのは、いろんなお化けが登場する「おばけのパーティー」という小咄です。主人公はろくろ首のお姉さん。ところどころセリフや動きに自身の発想で造形したろくろ首姉さんが現れていて、とても楽しい噺に仕上がっていました。とても初舞台とは思えない落ち着いた語り口。お見事でした。
続いて高座に上がったのは、活塾亭八三つさん。今取り組んでいるのが「まわりねこ」。ねこに強い名前をつけようと、思い悩む噺です。強いものと言ったら○○?と、いろんなアイデアを出すところで、それぞれに動きをつけようと思いついた八三つさん。写真は稽古時のものですが、何になっているところかおわかりでしょうか。これ、横綱照ノ富士です。土俵入りをしているところ。ここまで足が上がる特技を生かした演出です。デイサービスでは袴姿でこの土俵入りをやったところ、「おおっ」とお客様から感嘆の声が上がっていました。八三つさんならではの噺に進化し続けています。
仲入りで、歌を2曲披露し、続いて落語を演じたあーとさん。その名の通り、どんなジャンルであろうと自分の表現を人に見てもらうことが楽しくてしょうがないようで、いつだって意欲満々。その喜びがお客様にもそのまま伝わるので、見守るお年寄りたちも大きく感情を揺さぶられるのでしょう。時に指で目頭をそっと押さえ、時に大声で笑い、とても楽しそうです。この日かけたのは、高座では初めての「てれすこ」。いばっている代官を知恵でギャフンと言わせる落語の王道をいく噺。「そちもワルよのう…」などというくすぐりをしっかり入れてくるところなんぞ「おぬしもなかなかよのう」
学園デイサービス(R5/3/29)
- 2024年3月29日(金)午後2時15分〜3時
- 学園デイサービス
- 活塾亭夏みかん、活塾亭紙ひこうき、活塾亭つや姫、活塾亭ふらめん子、活塾亭ぬり江
- 演目 夏みかん「なんでもほしい」「代脈」、紙ひこうき「雨もり」「何もしていない」、つや姫「寿限無」「たの吉とうわばみ」、ふらめん子「オランダのウグイス」「ムカデのつかい」「貧乏神」、ぬり江「夕立屋」「ぞろぞろ」
開口一番は、初稽古の二日後に初舞台を踏む、夏みかんさんです。これまで何度も寄席を見てはいるものの、見るのと自分が演じるのとは大違い、のはず。ところが、マクラ、小咄たっぷりアレンジを加え、「代脈」という長いネタもよどみなく、ちっともあわてることなく自分のペースで演じました。これが初舞台とはだれも思わないでしょう。マイクが使えないことが、本番直前にわかったのですが、それでかえって度胸がすわったか、稽古よりもうんと声が出ていました。これから何度も高座を経験して、どんなふうに進化していくか楽しみです。
続いて、紙ひこうきさん、二回目の高座。最初に手製の紙飛行機を飛ばし、その後スカッとひびく声で小咄を二つ演じました。1月に初めて舞台を踏んで、人前でしゃべることのおもしろさに目覚めました。仲入りでは用意した紙飛行機を利用者さんに配って、飛ばしてもらいました。お客様といっしょに何かすることで、直接言葉を交わしたり、手を取り合ったりする経験を数多く重ねてもらいたいと願っています。紙ひこうきはそのためのとてもいい道具になります。これはぜひまた機会を作りたいです。きっと紙ひこうきさんもそう思っていることでしょう。
中トリはお姉ちゃんが、と登場したのはつや姫さん。今回は、本人の強い希望もあって、2席かけました。前回も演じた「寿限無」ですが、だれにとってもなじみのある話なので、「じゅげむ、じゅげむ…」と始まる度にお客様から笑いが起きます。それに押されて、しっかりと大きな声で泣いたり、怒ったりできました。やるごとにパワーアップします。もう一つが「たのきゅう」の民話版「たの吉とうわばみ」出雲弁で語ります。帰りに「出雲弁のお話もあったねえ」という声が中から聞こえてきましたから、印象深かったのだと思います。
仲入り後にグイッと落語の空気に戻す役どころ、今回の膝がわりはふらめん子さんが務めました。もともと力強く語れる子ではありますが、今回の声の張りはこれまでで一番でした。聞き手のことをよく考えてギアを上げられるところがすばらしい。マイクを使えば、微妙な抑揚が表せるのでまたちがった一席になることでしょう。フラメンコの素養のなせる技かと思いますが、目や口の動き、手振りなどで登場人物の感情をきめ細かく表現できるところはしゃべりだけでない、動作でお話の世界を想像させる落語のおもしろさを味わわせてくれます。
今回のトリを務めましたは、ぬり江さん。桜と椿の塗り絵を用意して、お客様との会話から入りました。今回2度目の試みでしたが、一回目に比べてかけひきを楽しむゆとりが出ていました。これも高座の恒例にして場数を踏むと、おもしろいコミュニケーションの場に育つことでしょう。小咄、落語ともにちょっと早口になりがちだったところを修正して、とても聞きやすい落ち着いた噺に仕上げていました。今落語の本を次々読んでいるのだとか、次に何をやろうかとネタ探しをしているようです。これほどの積極的な読書、読む力もぐんと伸びるに違いありません。
安来市大塚交流センター健康推進会議(R6/3/10)
- 2024年3月10日(日)午前10:00〜11:00
- 大塚交流センター研修室(大塚自治会ほか50名)
- 活塾亭紙ひこうき・活塾亭つや姫・活塾亭八三つ・活塾亭ぬり江・活塾亭ふらめん子
- 演目 紙ひこうき「紙飛行機実演」「雨もり」「何もしていない」、つや姫「雪ウサギ」「じゅげむ」、八三つ「祭りのカメ」「ケチな親子」「まわりねこ」、仲入り(ふらめん子と八三つ「フラメンコダンス」)、ぬり江「塗り絵披露」「夕立屋」「ぞろぞろ」、ふらめん子「なんでもほしい」「ムカデのつかい」「貧乏神」
古志原山根自治会新年会(R6/1/21)
- 2024年1月21日(日)午前11時30分〜12時10分
- 上乃木集会所(古志原山根自治会60名)
- 活塾亭つや姫・活塾亭ぬり江・活塾亭八三つ・活塾亭ふらめん子・活塾亭あーと
- 演目 つや姫「雨もり」、ぬり江「なにもしていない」、八三つ「祭りのカメ」「ケチな親子」、あーと「ふしぎな花屋さん」「じゅげむ」、ふらめん子「なんでもほしい」「ムカデのつかい」「オランダのウグイス」、(仲入り)ふらめん子「貧乏神」、あーと「雷の親子」「まんじゅうこわい」
トップバッターは、入塾9日目での初舞台、活塾亭つや姫さん。人前で話すのはとてもとても…と言いながらも、落語には興味があって体験教室に参加しました。その時は、かなり緊張気味でしたが1週間後の稽古では、見にいらした教室ご近所の皆さんを前に覚悟を決めて、覚えた小咄をしっかりと声を出して演じました。「よく聞こえたよ」と声をかけられてにっこり。これで自信がついたのでしょう。その二日後の初舞台、寄席の開口一番を進んで引き受け、稽古の時よりもさらに強く大きな声で勢いよく演じました。
この後全員がとても強く声を出して演じたのですが、一番バッターつや姫さんのクリーンヒットがみんなを勢いに乗せたのでした。
2番手は、これまた入塾9日目の初舞台、3年生の活塾亭ぬり江さん。つや姫さんとともに体験教室で小咄を体験しましたが、「もう大丈夫、覚えたでしょう?」「いや、もう少し」と何度も練習を繰り返していました。座布団に座って人前で話すことがちょっぴり怖かったのかもしれません。同じく1週間後の稽古日は、家で繰り返していた成果で少し余裕を見せていました。やはり見に来られたお客様から回を重ねてだんだん声が強くなっていったのを認めてもらって安心できたようです。
この日は、表情を見るとすっかり落ち着いていました。名前の元になった得意のぬり絵も披露し、これから高座のルーティンになりそうです。小咄もこれまでで最高の出来で、お客様にどっと笑ってもらいました。
3番は、活塾亭八三つさん。学園デイサービスで行った第1回活活こども寄席のときはまだ入塾前で、フラメンコダンスでの参加でした。楽しかったようで落語にもチャレンジ。稽古の時に特に練習したのは、「誰に向かって話しているか」を意識することでした。視線をそらさず、強い声で話しかける。相手役を引き受けてくださったおじさんが「今のは話しかけられているのがはっきりわかったよ」と言ってくださったことがきっかけで、噺にメリハリが生まれました。その後、この日の高座まで家でしっかり稽古したのだとわかる力強い発声で、二つの小咄、堂々と演じました。どちらもオチがバッチリ決まって、たくさんの笑い声と拍手を浴びました。
キャリアの長い(といっても4ヶ月ですが)あーとさんとふらめん子さんは、前半と後半2回高座に上がりました。写真は「まんじゅうこわい」で、みっつぁんが本当は大好きなおまんじゅうを食べるところ。菓子処松江の老舗和菓子屋さんの銘菓を食レポつきで演じました。これにはお客様も大喜び。おうちで実際に食べ比べてみたそうで、見事なリアリティでした。自由な創作をいくらでも入れられるのが落語のおもしろさであり、すばらしさです。どの噺にもちょっとした新しいアイデアを試みるあーとさん、落語をなぞるのでなく、広げているところがまさにアートです。
ふらめん子さんは、前半に小咄三つ、後半はネタおろしで「貧乏神」を演じました。入塾したてのころは、ちょっとした小咄にさえ「長い…」と不満をあらわにしていましたが、この長いネタを正確にそして大胆に演じるようになったのだから長足の進歩です。覚えることへの抵抗感などいつの間にやら消えてしまいました。ふて腐れてみたり、おねだりしたり、登場人物の心の内を目や手、口の動きで表現するので、噺の世界が実に生き生きと立ち現れます。稽古の時に、飛ばしてしまっていたセリフなどもしっかり修正されていました。努力に裏打ちされた完成度の高い「貧乏神」でした。
終了後、主催者の方から「みなさん、よかったよかったと、ほんとに喜んでくださいました。ありがとうございました」とのうれしい言葉をいただきました。こちらこそ、良い機会をありがとうございました。
松江算数活塾落語教室花の噺家五人衆、今後の活躍に乞うご期待!
(文・宮森健次/写真・佐野明美)
Tさんのメール
イベントを企画するとき、毎度迷うのがアンケートです。あの扱いにくいクリップペンシルで挟まれたアンケート用紙。どうも私は、直後に感想を書くということが苦手で、積極的になれません。でも、実際どう思われたのか、運営に問題はなかったか貴重な意見をいただけるのも事実。今回も、簡便なものでもやってみようかと思いはしたのですが、結局やめました。
終わってから、主催者代表のTさんや役員の皆さんからお礼を言われたのですが、こどもたちの落語がどうだったのか具体的にはどなたからも聞けなかったので、やっぱり書いてもらった方がよかったかなと思いました。
ところが翌日、Tさんから長いメールが届きました。寄席後の新年会を終えて、役員さんたちで二次会に流れたら、席上自然とこどもたちの落語の話になった。一年生四人と三年生一人なのだと告げると、大騒ぎになった。緊張の中であれだけできるのはなぜだ、声も大きいし所作もしっかりできている、大人の落語よりいいじゃないか、感激した、と口々に。
このメールを読んで、アンケートとらなくてよかったと思いました。あの書きにくいクリップペンシルで(そこまで嫌わんでも)、ひとたび言語化してしまったら、二次会がその話でもちきりとまではならなかったかもしれませんし、メールの中身はまったくちがうものになったことでしょう。ほんとうに心動かされたときは、言葉になるまでに時間がかかりますから。一夜明けてのTさんの二次会レポートから、いかにみなさんがこどもたちの落語に感動されたか、ようく伝わってきたのでした。
この感じ、なんかの噺にあったぞ、としばらく考えていたら思い当たりました。「中村仲蔵」。いい噺ですよ、これ。
東奥谷教室合同稽古(R5/12/22)
- 2023年12月22日(金)午後3時〜4時30分
- 東奥谷教室
- 活塾亭八三つ・活塾亭ふらめん子・活塾亭あーと
- 演目 八三つ「祭りのカメ」「ケチな親子」「んのつくことば」、ふらめん子「なんでもほしい」「ムカデのつかい」「オランダのウグイス」「貧乏神」、あーと「雷の親子」「じゅげむ」「まんじゅうこわい」
八三つさんは、2回目の稽古でした。たくさんのお客様の前で演じるのは初めてだったので、緊張して言葉が出なくなりました。これは、ほとんどの子が何度かくぐらないといけない関門みたいなものです。これまで頭が真っ白になって固まってしまう子を何人も見てきました。八三つさんも一度は高座を下りましたが、一呼吸置いて二回目に上がったときは、しっかり小咄を演じました。立ち直りが早い。これから場数を踏むと、緊張とうまく付き合えるようになります。お客様から「上手だったよ」と声をかけてもらいました。恥ずかしさを乗り越えて突き抜けていく過程を来年もお客様にも見守ってもらいましょう。
ふらめん子さんは、「なんでもほしい」という小咄を自分でも好きなようです。抜群の安定感で、これを演じると調子が出てきます。今回も、ほしかったぬいぐるみを手に入れたときの喜びを表現しているとき、お客様から「おー」という声が上がりました。何度見ても楽しい。自信をもっているのが伝わってくるので、お客様もそれに誘われて物語の世界に入ります。落語の醍醐味です。「貧乏神」は、途中まででしたが、ふらめん子さんらしい勢いのある話になっていきそうで、続きが楽しみです。何度も何度も聞いてもらうことで話も育っていきます。「なんでもほしい」もほかの小咄も「貧乏神」もこれからどんどん成長していきます。
あーとさんは、遠くからおばあちゃんが見に来てくれているので、気合いも入ったのでしょう。お話をきっちり覚えた上に、きっとこんな会話をしているだろうと想像して、テキストにいくつも台詞を加えていました。テキストの通りしゃべらないといけないなんてルールはないので、自分で稽古しているときでも、登場人物になりきって、ふと口を突いて出てきた言葉など、どんどん入れていってほしいものです。「まんじゅうこわい」は私も最後まで聞いたのは初めてでしたが、お客様から「絵が浮かんだ!」と声がかかりました。落語は話し手と聞き手の想像の共有で成り立つので、これは最高の賛辞です。貫禄さえ感じる稽古でした。
学園デイサービス(R5/11/25)
とき:令和5年11月25日(土)午後2時15分〜午後2時45分
- ところ:学園デイサービス(利用者、職員の皆さん20名)
- 出演 活塾亭ふらめん子・活塾亭あーと・瑞葉さん
- 演目 ふらめん子「なんでもほしい」「ムカデのつかい」,あーと「ふしぎな花屋さん」「じゅげむ」、ふらめんこ・あーと・瑞葉さん 踊り「フラメンコ」
出演前に所長さんから、「利用者さんには何も言っていません」と事前予告をあえてしなかったことを知らされましたが、子どもたちが会場に入ると、「まあ、かわいい」とあちこちから歓声が上がり、雰囲気が一気に盛り上がりました。職員の皆さんの粋な計らいです。
トップを務めたのはふらめん子さんですが、これまでの稽古で毎回教室ご近所の皆さんに聞いてもらっているので堂々としたものです。大いに会場を沸かせました。小咄中、ぬいぐるみを抱きしめて頬ずりする場面がありますが、お年寄りたちから一斉に「あー」「おー」などの声が上がりました。迫真の落語への賛辞です。
続いて登場したあーとさん、耳の不自由な人もいると聞いて、言葉一つ一つを大切に、大きく、はっきり、間を開けて語りました。小咄は登場人物の会話をこれまで以上に取り入れて物語の世界を深めました。さらに『じゅげむ』は、長い名前を繰り返す度に笑い声が上がる見事な一席になりました。
落語の後は、瑞葉さんを加えて三人でフラメンコを踊りました。手拍子、「オレ!」の掛け声が場内に響き渡りました。瑞葉さんは、始めてまだ半年にもなりませんが、笑顔でテンポよく踊り、舞台をひときわ華やかにしました。二人の落語を聞いて自分もやってみたくなったそうで、新しい塾生誕生とあいなりました。次回の高座は「花の中三トリオ」(古い…)を向こうに回して「花の小一トリオ」が実現しそうです。
高座を終えると「上手だったよー」「よくあれだけ覚えて話せるねえ」「また来て聞かせてね」「フラメンコすてきだったよ」と利用者の皆さんから口々に声をかけられ、子どもたちもみんな満足そうでした。中には年齢差九十年超の大先輩もいらっしゃいましたが、こんな方たちと直接言葉を交わせるのも「活活こども寄席」の醍醐味です。
自分の話や踊りに心動かし、歓声を上げ、拍手をし、大いに笑ってくださった皆さんを前にして、子どもたち一人一人の心に宿ったもの、それがこれからどのように子どもたちの暮らしを彩るのか楽しみです。
(文・宮森健次/写真・佐野明美)