松江算数活塾のロゴ

 

 「細水保宏を知っていれば、一流の算数・数学教育研究者である」という命題は必ずしも成り立ちませんが、「一流の研究者ならば細水保宏を知っている」という命題は、必ず成り立ちます。

 細水さんは、かつて筑波大学附属小学校算数部(以下算数部)で、千人を超す超満員の教員を前に公開授業をしてこられました。現在は明星小学校を「算数の明星」とブランディングする校長先生、日本数学教育学会では講習会講師として、教員が範とするトップリーダーです。

その先生がなぜ、地方のちっぽけな学習塾の顧問をしてくださり、しかも年に2回も来てくださるのか。

 私は、算数部が毎年行う全国算数授業研究会で幹事を務めたご縁で親しくなり、平成14年には、その松江版「夏期算数授業研究会」に、指導助言、講演講師としてお迎えすることができました。以来、東京と松江で算数の指導を直接受けています。

 その教えの中から、私が追い求めたいのは、「楽しさを味わう」ということです。私は特に「味わう」ことに魅せられました。

 「快」の感覚を覚えるのは、考えている最中よりも思い起こしているときだから、そのときにどんな言葉がけをするかで味わい深さがずいぶん異なる。子どもから考えを引き出して価値づける、子どもが味の余韻に浸っているときに、気の利いた言葉がかけられる、そんな粋な授業、粋な先生をめざし続けています。

 松江算数活塾では、思考力検定問題や、細水さんが会長を務められるガロアの会の問題集も活用して演習しています。比較的長文で問題に含まれる情報量が多いこともあって、子どもの取り組みを認められるシーンも多い。このように最高レベルの演習を行っていますが、「答え」が合っていることよりも「仕方」の獲得、「仕方」の獲得よりも「仕組み」の理解、それを島根にいながらにして味わうことができるようにしたい。それが細水顧問はじめ私たちの願いです。

 来たる3月3日(日)の午前中には算数教室会員生徒向けの算数授業を、午後1時30分からは「大人の算数活塾」「おもしろくて浜っちゃう算数(横浜だけに)」を、テクノアークしまねを会場にして開催いたします。みなさまのご参加を心よりお待ちしております。

99%の小学生が気づいていないこと

統計グラフのカラクリ

 先生は数多くの著作がありますが、一昨年Z会から99%の小学生は気づいていないシリーズ『統計グラフのカラクリ』が発刊されました。

 統計と言うと小学校では平均を求める場面が思い浮かぶことでしょう。平均を小数第一位まで求める問題では、小数第二位を四捨五入する手順が徹底され、5.5は〇、5.4は×と、本来「数をまるめて見る」ところに醍醐味があるはずの学習が、99%の小学校では角張った算数指導がなされています。

 日曜朝の情報番組で、(株)カインズの商品開発に徹底的なデータ集積が行われていることが取り上げられていました。缶ビールの直径など、引き出し収納品を徹底的に調べて7の倍数の法則なるものを導き出し、仕切りボックスのサイズ設定に活かしてガッチリという内容でした。

 先生の本には、ナイチンゲールが看護の仕事に統計を活用したことが紹介されています。兵士の死亡原因が戦争による負傷よりも病院内での病気感染の方が多いことから、病院の衛生状態の改善を政府に働きかけたという内容でした。

 どちらも、統計という学問を「活用」に結びつけて、望ましい未来を創りあげています。算数の美しさ、奥深さを感じます。

 しかし、99%の小学生はそれに気づけていません。その原因の一つに「できる」「わかる」、しかも「はやく」「かんたん」「せいかく」に、という「は・か・せ」の「答え」重視の算数観があると思います。先ほどの5.4を「ほぼ〇」として取り扱うと、クレームの嵐なのです。

 統計の学習は、数を動かしてみようとするきっかけに有効です。数に対してここからここまでという公式的な解答はなく、資料の性質や調査の目的に照らして柔軟に対応しなければいけません。算数の見方・考え方をフルに発揮して「数に柔軟に対応できる」ように育てることは、寛容の心を育み、人生をフレキシブルに生きていく態度につながります。

 99%の仲間がいる方が安心かもしれませんが、算数・数学の未来、自分自身と世界の未来を豊かにするために、1%の仲間入りを果たしてほしいと願っています

       (塾長 川上宜久)

細水保宏先生の第5回大人活塾ご案内