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 1950年頃のイギリスの物語です。題名通り、5人の少年が地下の洞穴の冒険をする話なのですが、それぞれの個性がわかりやすく書き分けられていて読みやすいです。

 楽しいはずの夏休みに、ジョンは家の事情で叔父の家にやられます。ぼんやり過ごしていたある日、地下へ続く洞窟の入口を偶然見つけます。ジョンは、隣家の少年ジョージに誘われて入った秘密クラブの仲間たちと、懐中電灯やカンテラを手に、長くて暗い洞窟へと入っていきます。

 ここで五人の少年について紹介しましょう。ジョンは冷静で責任感が強く、仲間に的確な指示が出せる少年です。危険なことは自分が引き受け、仲間をフォローすることも忘れません。ハロルドはちびでせっかち、あだ名は稲光。考えるより先に行動するため失敗もしますが、へこたれない明るさの持ち主です。カスバートはいつも食べ物のことを考えていて、あだ名はふとっちょ。ひどいことをされても、最後は相手を思いやる気のいいやつです。アランはリーダーになりたくて常に支配的なもの言いをしますが、実際は怖がりでかんしゃくもちで弱い面をもっています。

 私が一番好きなのはジョージ。家庭的には問題を抱えていますが、大事なことはちゃんとわかっている子です。ふだんは静かで穏やかで、しかし言うべき時にはちゃんと意見が言え、友達を助けるためなら何としても前に進もうとします。ジョージの家は貧しく、探検に必要な懐中電灯さえ用意できません。それでも古いカンテラをきれいに磨き、すぐ使えるようにしてきます。兄から借りたひきずるような防水外套を着て登場するジョージは、外見こそさえませんが、縄梯子を作ってくるなど考えはなかなかいいのです。探検中に起きた思わぬトラブルのため、途中からジョンと稲光の二人組、ジョージとアランとふとっちょの三人組とに分かれて進むことになってしまいます。怖れと不安でかんしゃくを起こすアランにジョージは言います。「ジョンと稲光はどうあっても救わなきゃいけない。きみが生命がおしいのなら、もどったらいいよ」「古ぼけたカンテラひとつしかなくたって、先頭に立って二人を探しに行くんだ」この言葉にしびれました。

 この本を読んだ友人に「誰が好き?」ときいたら、「ジョンもジョージももちろんいいけど、稲光やふとっちょもいい味出してるし、アランだってこうして成長していくんだって思ったら愛おしく思えたわ」と返ってきました。私もほんとにそうだなと思いました。ジョンとジョージの互いへの信頼や五人それぞれの持ち味、それにジョンの叔父さんの存在もいいし、5人と一緒に冒険をやりとげたような満足感を味わえる本だと思います。

(『地下の洞穴の冒険』リチャード・チャーチ作 大塚勇三訳 岩波少年文庫 高学年から)

児童文学愛好家 天野和子