松江算数活塾のロゴ

まんじゅうこわい

 「じゅげむ」と並んで最もよく知られた話です。この間、塾に来た一年生の子に「落語って知ってる?」と聞いたら、「まんじゅうこわい」と得意そうに答えました。

 「こわいものは?」と聞かれた男が、本当は大好きなまんじゅうをこわいと言って、友達にいたずらさせてまんまとせしめるという話です。起承転結がはっきりしていて子どもにもわかりやすく、演じやすいネタです。高尾小学校でも代々だれかが持ちネタにしています。この話の見所は、こわくて逃げ出すと思って投げ込んだまんじゅうをおいしそうにパクパク食べるところです。高尾小で最初に演じたのは、もう高校生になっているH君です。なかなかのアイデアマンで、食べるまんじゅうを地元のお菓子屋さんの主力商品にして、いかにもそれを食べているふうに演じました。「おっ、これは松葉屋さんの、噂の生どらだ。これ好きなんだよなあ。」と言いつつ、いっしょに口に入れてしまった乾燥剤を出すような細かな所作まで入れて。その地では誰もが知っているお菓子なので、お客さんも大喜びです。拍手つきの笑いを浴びてH君も大満足でした。話はそれで終わりません。そのお菓子屋さん、噂を耳にされたようで、後日、「うちの宣伝をしてくださって、どうもありがとうございます。」と「噂の生どら」はもとより、他のお菓子もどっさりと学校に届けてくださいました。給食の時だけでは食べきれず、全校児童(と言っても十名足らずですが)持ち帰って家族へのお土産にしました。

 子どもたちがこの展開を一回きりで終わらせるはずがありません。奥出雲町外での高座では、ご当地の代表的なお菓子を調べて、柳の下の泥鰌をねらいました。落語はどこでも大いに受けましたが、泥鰌はそう簡単にいません。でも、こんなことがありました。大社町に呼ばれたとき、H君は意欲満々で大社名物「俵まんぢう」を大いに褒めておいしいおいしいと食べてみせました。かわいい子どもたちの落語に皆さん大喜びでしたが、泥鰌はなし。でも、高尾小の子どもたちと高尾という地区に興味を持たれたようで、後日バス仕立てで高尾小を訪問されました。その時の子どもたちへのお土産がどっさりの「俵まんぢう」だったのです。時間差の泥鰌もたいそうおいしかったです。

「まんじゅうこわい」は、上方には三十分超の大ネタ版があります。怪談になったそれを聞くと、こんなダイナミックに話が変化するのかと驚きます。変幻自在の上方落語、そういえば以前高座で七代目笑福亭松喬さんの『チョコレートこわい』というのを聞いたことがあります。もしまた機会があったら、今の子どもたちの好物でやってみるのもいいかなと思っています。「ポテチこわい」とか「グミこわい」とか。

活塾草紙 その壱(松江算数活塾)

                      文 宮森健次