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ばくちをする男

 落語のどんなところがいいか、と聞かれて「だってたぬきやきつねが出てくるでしょう。いいよねえ」と語ったのは、名人故古今亭志ん朝さんです。ちなみにジブリ映画「平成狸合戦ぽんぽこ」のナレーションを務めたのも志ん朝さんでした。

 動物が出てくる落語はたくさんありますが、抜きん出て多いのはやはりたぬき

でしょう。人を化かす上にどこかユーモラス、落語がこんな特異なキャラクターをほっておくはずはありません。当塾もたぬきをメインキャラクターにしていますが、これは考案者が落語の縁起担ぎに塾のそれを重ねたためです。「化ける」は「上昇する」「成長する」につながり、縁起のよいものとされているのです。それゆえ寄席ではたぬきネタはかかりやすく、今回のお題の「たぬさい」もこれまで何度も聞きました。塾のたぬきにも、算数も落語も大いに上昇、成長しよう、という願いがこめられています。このたぬき、まだ名前がありません。思いつかれた方、ぜひお寄せください。

「たぬさい」は「たぬきのさいころ」を縮めたもの。あるばくち打ちが恩返しに来たたぬきをサイコロに化けさせて一もうけを企むという話です。たぬきの純な思いを悪用するのですから、現代で言えばこの男、特殊詐欺グループのリーダーみたいな悪党ですが、そこは落語なので、限りなく不徹底で悪人になりきれません。そもそも「たーちゃん、次は一、一だよ、一お願いします。」など手の内をさらけだす指示をおおっぴらにするのですから、いくら鈍い仲間たちでも気づきます。初めは上手くいって儲けますが、すぐにぼろを出してしまいます。よせばいいのについ調子に乗ってしまう男と大まじめに尽くそうとするたぬきのやりとりがたまらなくおもしろい話です。

 子どもとたぬきは相性がいい、そう思います。大人に比べてどことなく丸みを帯びた顔や体型だし、人をだますわりにはずるい感じがしないという点でも子どもが演じるたぬきはよくはまります。ちょっと複雑な心情を描くので、これまであまり積極的に取り上げてきませんでしたが、子ぎつねと子だぬきが登場するとてもすてきな小咄があります。当塾の噺家とチャレンジしてみたいと思っています。「活活こども寄席」の成長のためにも「化ける」話を。

狸と男

                   (宮森健次)